大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

浦和地方裁判所 昭和63年(行ウ)11号 判決 1994年4月25日

原告

檜垣清市(X1)

中野三郎(X2)

岸本善太郎(X3)

平林重三郎(X4)

鈴木美代子(X5)

竹内文雄(X6)

明石與三郎(X7)

山田耕作(X8)

川崎孝志(X9)

弓山昭男(X10)

原告ら訴訟代理人弁護士

小山香

右補佐人

小島美里

被告

新座市固定資産評価審査委員会(Y)

右代表者委員長

神谷君安

右訴訟代理人弁護士

荒井金男

鈴木榮二郎

田中圭助

理由

四 ところで、原告らは、本件地区を状況類似地区とする標準宅地の価格が一平方メートル当り三万一四〇〇円であるのに対し、本件地区の東南側に隣接するあたご三丁目のうち本件地区を除いた地区を状況類似地区とする標準宅地及び北東側に関越自動車道を隔てた菅沢二丁目地区を状況類似地区とする標準宅地のそれぞれの価格が一万三八〇〇円であること、すなわち、前者が後者の二・四倍となっており、両者間に著しい不均衡があることを理由として、本件決定が実体上違法であると主張する。しかしながら、本件地区とほか二つの地区はいずれも都市計画法上市街化調整区域と定められた地域にあるが、前認定のとおり、昭和四一年九月当時、本件地区においては、大規模な宅地開発事業が施行されたところ、本件地区を含む付近一帯の地域が都市計画法により市街化調整区域と定められたのはその後のことであり、本件地区は同法第四三条第一項第六号の適用を受ける、いわゆる既存宅地として建築等の制限を受けないことは弁論の全趣旨に照らして明らかである。これによれば、本件地区内の宅地は取引上市街化区域と定められた地域にある宅地と同等に取り扱われ、本件地区内の宅地はほか二つの地区内の宅地よりも高い価格で取引されるのが通常である。また、前認定のとおり、本件地区とほか二つの地区内の宅地の固定資産の価格は前記宅地開発事業が施行されるまでは全く同一であり、右開発事業により本件地区に多くの資金が投入され、本件地区が宅地の区画、道路、施設・設備等の点で優れた住宅地区として再生した時点で、それぞれの地区内の固定資産の価格の間に二・八倍の開差が生じたのであり、これには正当の理由があるというべきである。検証の結果によれば、今日、本件地区内の宅地の状況は施設・設備に老朽化がみられるものの、基本的には従前と変りのない様相を呈していること、ただ、時代の推移とともに、地区内の宅地上には一部に倉庫、事務所など住宅以外の建物も建築され、地価の高騰に伴い区画の細分化がみられるなど本件地区全体の住宅地区としての環境に負の要因をもたらす現象もみられなくはないこと、一方、ほか二つの地区においては地区内にかなりの住宅が存在し、これが集まって部分的、局地的に住宅群を形成している所もあるが、いまなお、地区内にはかなりの畑が広がっており、本件地区とはその様相を異にしていることが認められる。これによれば、将来的には、本件地区内の宅地についてはその固定資産の価格の上昇率が抑えられ、一方、ほか二つの地区内の宅地については右上昇率が引き上げられ、両者間に存する開差が狭められることはあり得ても、今日、前者の価格を引き下げて後者の価格との開差を狭めなければならない合理的な理由を見出すことはできない。以上に説示したところからすれば、いまなお、両者の価格間に二・四倍の開差があっても、これには、正当な理由があり、原告らの主張は採用できない。

次に、原告ら主張の手続上の問題点について検討するのに、昭和六三年度を基準年度とする評価の時点においては、新座市では市長が固定資産評価員を兼ねていたことは当事者間に争いがないが、このことは被告による本件決定とは直接的な関係はなく、右のような事実があったからといって、本件決定が直ちに違法となるわけではない。

固定資産評価審査委員会の委員が原告ら主張のような知識を持ち、能力を有することは望ましいことではあるが、委員にどのような人物を選任するかは市町村長の裁量に属することであって、被告の三人の委員が法第四二三条第三項に則り市議会の同意を得て選任されたものである限り、被告の構成に違法があるとはいえない。また、成立に争いのない甲第二号証によれば、新座市においては条例で、被告の書記は市職員のうちから市長の同意を得て委員長が任命するとされていることが認められるところ、これを違法とする法令上の根拠を見出すことはできない。

原告らは、被告訴訟代理人である荒井弁護士が新座市の顧問弁護士となっていることを理由として、同弁護士がした訴訟行為は無効であると主張するが、そのように解すべき法令上の根拠は存しない。

以上の次第であって、本件決定には違法としてこれを取り消すべき事由は存せず、本件決定は適法である。

五 よって、原告らの請求は理由がないから失当としてこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第八九条、第九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 大塚一郎 裁判官 中野智明 中川正充)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例